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現段階でのアルコールと健康に関するエビデンスと今後の命題(明星 智洋)

多くの医学的な文献で検索をかけても梅酒が健康に良いといわれる論文は全くない。いわゆる通説である可能性はある。

むしろ、アルコールは体にとって良くないと言われているのが一般的である。

アルコール性肝硬変、肝細胞がん、乳がん、食道がん、咽頭がん、喉頭がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、肥満、糖尿病、脂肪肝、アルコール依存症、交通事故死の増加。

など、アルコールの負の作用はイメージとしても多く浮かんでくる。

もちろん、医学的な根拠もあり、論文もたくさんある。

エビデンス

その一方で近年、ワインに含まれるポリフェノールに抗酸化作用があり、動脈硬化予防に良いといわれており、ワインブームの後押しとなっている。

その他、医学的に有名な雑誌Lancetにも多くの論文が掲載されている。

(参考文献:田中清高、赤ワインのすごい薬効、マキノ出版)

また少量から中等量の飲酒は高血圧男性の心血管疾患の死亡率低下と関連しているという論文もある。(Arch Intern Med. 2004; 164: 623-628)

また似たような内容で

酒を大量に消費する女性と毎日飲酒する男性は心臓疾患が少ないという論文もある。(British Medical Journal. 2006; 332: 1244-1247)

デンマークの約57000人の調査。

男性に関しては、一回量を少なくして、飲酒回数を多くすること。

女性に関しては、飲酒の回数ではなくて、むしろ飲酒量の多さに関連していた。

しかし、このデータで有益性がでたのは中年者であり、若年者に関しては有益性はでなかった。なぜなら、若年者は心臓疾患のリスクをまだ持っていないためである。

中年男性は6年近くにわたって毎日飲酒した場合、心臓疾患のリスクが41%減少する。

週に1回以上飲酒する女性は、心臓疾患のリスクが36%以上減少する。

飲酒量の多い(週に170g以上)女性は心臓疾患のリスクが71%も少なかった。

また日本でも熊本大学大学院の木田教授より、芋焼酎の搾りかすで作った醸造酢に抗がん作用があることをマウスの実験で証明した。(2005)

この結果は、焼酎の副産物をリサイクルし、なおかつ有益なものを産生できる一石二鳥の方法となる可能性がある。

梅酒の効能

クエン酸:体内のエネルギー代謝の一環であるクエン酸サイクル(TCAサイクル)によって、エネルギー代謝が活発になり、体内の疲労物質としてできた乳酸などを分解し、疲労回復になる。

医学への貢献

これらのことを踏まえて、今後我々はどのようなコンセプトで梅酒を世に広めていく必要があるのだろうか?

最初に述べたように、現段階での梅酒の健康に関するエビデンスは皆無である。

そのために、われわれで、大規模臨床試験をする必要がある(できれば前向き試験)。

たとえば、

梅:青梅か、完熟梅か? 産地は? 銘柄の違いは?

ベース:醸造用アルコール、焼酎(米、麦、芋など)、泡盛、ワイン、日本酒、ブランデー・・・??

甘み:氷砂糖、蜂蜜、グラニュー糖、和三盆、黒糖? 糖度はどれが一番健康に良いのか?

最も適正なアルコール度数は?

一日に摂取する梅酒の量は、いくらが適正か?

休肝日は設ける必要はあるのか?その間隔は?

他のアルコール飲料との関連は?

など、追求すべきことはたくさんある。

しかし、それだけ梅酒にバリエーションを持たせることができるということでもある。

まず、大規模なサーベイランスが必要である。

そのためには、酒販店、酒蔵さんたちの協力は必須である。

これは、マーケットを考えるときにもどちらにしろ必要になってくると思われる。

梅酒=健康ということが医学的に証明されたら、消費者の健康への寄与だけでなく、医学界への貢献、梅酒市場への貢献など多大なメリットがあるものと考えられる。

【参考資料】健康日本21

 厚生労働省が21世紀における国民健康づくり運動について具体的に示したもの

1.はじめに

 我が国においてアルコール飲料は、古来より祝祭や会食など多くの場面で飲まれるなど、生活・文化の一部として親しまれてきている。一方で、国民の健康の保持という観点からの考慮を必要とする、他の一般食品にはない次のような特性を有している。

(1) 致酔性:飲酒は、意識状態の変容を引き起こす。このために交通事故等の原因の一つとなるほか1)、短時間内の多量飲酒による急性アルコール中毒は、死亡の原因となることがある2)。

(2) 慢性影響による臓器障害:肝疾患、脳卒中、がん等多くの疾患がアルコールと関連する3)〜9)。

(3) 依存性:長期にわたる多量飲酒は、アルコールへの依存を形成し、本人の精神的・身体的健康を損なうとともに、社会への適応力を低下させ、家族等周囲の人々にも深刻な影響を与える10)。

(4) 未成年者への影響・妊婦を通じた胎児への影響:アルコールの心身に与える影響は、精神的・身体的な発育の途上にある未成年者においては大きいとされており11)、このため、未成年者飲酒禁止法によって、未成年者の飲酒が禁止されている。また、妊娠している女性の飲酒は、胎児性アルコール症候群などの妊娠に関連した異常の危険因子である。

 アルコールに関連する問題は健康に限らず交通事故等、社会的にも及ぶため、世界保健機関では、これらを含め、その総合的対策を講じるよう提言している12)。

 アルコールに起因する疾病のために、1987年には年間1兆957億円が医療費としてかかっていると試算されており、アルコール乱用による本人の収入減などを含めれば、社会全体では約6兆6千億円の社会的費用になるとの推計がある13)14)。これを解決するための総合的な取り組みが必要である。

2.基本方針

(1)多量飲酒問題の早期発見と適切な対応 病院入院者のうち、男性の21.4%に問題飲酒を認めたとする調査や15)、高校生の1割以上が親の問題飲酒を認識しているといった調査があり16)17)、多量飲酒に伴うアルコール関連問題は身近な課題となっている。医療サービスや保健サービス、地域、職場、学校など多くの場でアルコール関連問題を早期に発見し、早期に介入することが必要である。

(2)未成年者の飲酒防止 未成年者の飲酒問題には飲酒者自身の現在の健康問題だけでなく、将来にわたっての影響が大きく11)、これを防止するための地域、学校などにおけるアルコール関連問題に関する環境整備など多くの働きかけを行うことが必要である。

(3)アルコールと健康についての知識の普及 わが国の男性を対象とした研究では、平均して2日に日本酒に換算して1合(純アルコールで約20g)程度飲酒する者が、死亡率が最も低いとする結果が報告されている18)。諸外国でも、女性を含め、近似した研究結果が出ている19)〜29)。

 これらのアルコールと健康との関係について正確な知識を普及することが必要である。

3.現状と目標

(1)多量飲酒者について

 わが国における飲酒の状況をみると、年代・性別では30代以上男性の飲酒量が多い30)〜32)。また、平均1日当たり日本酒に換算して3合(純アルコールで約60g)以上消費する者が成人男性においては4.1%、成人女性においては0.3%であるとの報告がある31)。多量飲酒者は、健康への悪影響のみならず、生産性の低下など職場への影響も無視できない。このことから早期の対策を積極的に実施していく必要があり、2010年までに、1日当たり平均純アルコールで約60gを越える多量飲酒者を減少させることを目標とする。

_1日に平均純アルコールで約60gを越え多量に飲酒する人の減少

 目標値: 2割以上の減少

 基準値: 男性4.1%、女性0.3%

(平成8年健康づくりに関する意識調査(財団法人健康・体力づくり事業財団))

(2)未成年者の飲酒について

 一方、最近の未成年者を対象とした調査では、月に1−2回以上の頻度で飲酒する者の割合は、中学3年生男子で25.4%、女子17.2%、高校3年生男子51.5%、女子35.9%と、未成年者の飲酒が日常化しており33)、将来のわが国における飲酒問題の拡大につながることが危惧される。未成年者の飲酒問題は将来への影響が大きことから、未成年者の飲酒を早期になくすことを目標とする。

_未成年の飲酒をなくす。

基準値: 中学3年生男子25.4%、女子17.2%

高校3年生男子51.5%、女子35.9%

(平成8年度未成年者の飲酒行動に関する全国調査 (尾崎ら))

(3)「節度ある適度な飲酒」について

 前述したわが国の男性を対象とした研究18)のほか、欧米人を対象とした研究を集積して検討した結果では、男性については1日当たり純アルコール10〜19gで、女性では1日当たり9gまでで最も死亡率が低く、1日当たりアルコール量が増加するに従い死亡率が上昇することが示されている34)。

 従って、通常のアルコール代謝能を有する日本人においては「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する。

 なお、この「節度ある適度な飲酒」としては、次のことに留意する必要がある。

1) 女性は男性よりも少ない量が適当である34)35)

2) 少量の飲酒で顔面紅潮を来す等アルコール代謝能力の低い者では通常の代謝能を有する人よりも少ない量が適当である36)37)

3) 65歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である38)

4) アルコール依存症者においては適切な支援のもとに完全断酒が必要である

5) 飲酒習慣のない人に対してこの量の飲酒を推奨するものではない

_「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する。

注:主な酒類の換算の目安

お酒の種類 ビール

(中瓶1本500ml) 清酒

(1合180ml) ウイスキー・

ブランデー

(ダブル60ml) 焼酎(35度)

(1合180ml) ワイン

(1杯120ml)

アルコール度数 5% 15% 43% 35% 12%

純アルコール量 20g 22g 20g 50g 12g

4.対策

(1)アルコール関連問題の早期発見と早期介入 職場、学校、地域、医療サービス、保健サービスなどあらゆる場面で、アルコール関連問題の早期発見と適切な介入を行う必要がある。また、これらに従事する人の資質の向上のため、適切な情報提供が必要である。

(2)未成年者の飲酒防止 未成年者に対しては、飲酒の心身に与える影響についての知識を十分に与えることはもとより、販売や広告などの社会環境の面から働きかけることが必要である。また、学校教育や地域保健の現場における健康教育を充実する必要がある。

(3)国民一般への情報提供 国民一般に対しては、アルコールと健康の問題について適切な判断ができるよう、「節度ある適度な飲酒」など正確な情報を十分に提供する必要がある。

(4)アルコールを取り巻く環境の整備 酒類の製造・販売を行う酒類業界は、国民の健康を維持増進し、社会的責任を果す観点から普及啓発をはじめ、様々な取り組みを行ってきた39)。

 断酒会等の自主組織は、アルコール依存症者の自立支援などアルコール関連問題に取り組んできた40)。

 これら多くの関係者の積極的な取り組みにより、適切な環境を築く必要がある。

5.その他

(1)アルコール関連問題等に関する調査・研究 現状においては全国民を対象とした飲酒状況や、健康影響の規模などの詳細なデータが十分であるとはいえず、今後有効な対策を立て、評価を行うためには、必要な調査の実施、データの集積を行う必要がある。

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